ほしの、おうじさま
苦手な人と一緒に、しかも先輩社員の目を気にしながらせかせかと落ち着かない気分で社食を利用する必要はないだろうと改めて自分自身に言い聞かせた。

さて、これから30分どのように過ごそうか。

そう考えながらチラリと向井さんを見やると、星野君含む、周りの席の人達と何やらお話中であった。

性格的にギャーギャー騒ぐタイプの方達ではないので話の内容までは聞こえて来ないけど、ほのぼのまったり、といった感じで会話している。

当然、その輪の中に入って行く勇気は私にはない。

仲間なのだから「何の話してるの~?」なんて気軽に突入しても良いんだろうし、向井さんなら快く受け入れてくれるだろうけども、私にとっては尋常じゃなく緊張を強いられる行為なのだ。

やっぱここはいつも通りおトイレに行って、後は水分補給しつつ今までの研修で取ったメモでも見ながら過ごそうかな。

そこでハタと気が付く。

そうだ。
水筒の中身がもう残り少なくなっていたんだっけ。

いつもはそれだけで一日もつのだけど、今日は何だかやけに喉が渇いてハイペースで飲み進めてしまったのだ。

定時までまだまだ時間があるし、念の為新しい水分を調達しておいた方が良いだろう。

そう決意し、トートバッグの中から小銭入れを取り出して立ち上がると、私は出入口へと向かった。
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