ほしの、おうじさま
自動販売機は一階ロビーと社食内、会議室フロアであるこの階、そして一つ上の重役室フロアに設置されている。

そして社食以外の当該スペースには、機械を取り囲むようにベンチが置かれていて、ちょっとした休憩所になっているのだ。

社内で飲み物を買うのは実は初めての経験なのだけれど、研修資料にビル内のフロアマップが付いているし、また、各部署へ挨拶行脚した際に通りすがりに目にしたので機械の設置場所はきちんと把握できていた。

当然私は廊下に出た後、エレベーターホールの先、階段室手前にあるこの階の自販機コーナーを目指して歩を進めた。


「え~っと…」


目的地にたどり着き、メーカーの異なる3台の機械の前を順に移動しながらラインナップをチェックする。

しばし思案した後、ノンカフェインで様々な成分が入っているというペットボトルのお茶を購入する事にした。

私の場合甘い物を飲むと余計に喉が渇いてしまうので、それらは最初から選択肢の中にないし、そしてペットボトル入りなら飲みきれなくても持ち帰れるからそのチョイスにしたのだ。

金額ピッタリの硬貨を投入してボタンを押し、落下して来た商品を取り出すべく身を屈めた所で。


『来週から本格業務か…』


ふいに、背後から男性の呟きが聞こえて来た。


『ったく、何でよりによって星野が企画で俺が宣伝なんだよ』


……ん?
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