ほしの、おうじさま
必然的に私もその数歩手前で立ち止まり対峙する。

「何で俺が愚痴ってたのが分かったんだ?」

「いや、何でって…」

相変わらず居丈高な口調で発せられる問い掛けに、私も負けじと強気で返答する。

「充分聞こえるような声でぶつぶつと呟いてたじゃない」

だから振り返った時に一瞬『あれ?』と思ったのだ。
かなり鮮明に聞き取れた事から、てっきりすぐ背後に佇んでいるのかと思いきや、若干距離があったもんだから。
だけど言い換えればその位置関係でもしっかりと耳に届くくらい、バカデカイ独り言を口走っていたという事になる。
「何で分かった」だなんて確認するまでもないと思うんだけど。
それとも本人は自分の声の音量を自覚できていないのだろうか。

「確かにアイツへの愚痴は呟いた」

「ほら、やっぱり…」「ただし、心の中でな」

その告白を受けて思わず興奮気味に発した私の声を押さえ付けるように阿久津君は言葉を被せた。

「俺は一切口には出してねーんだよ」

「……え?」

「それなのに、何で聞こえただなんて嘘をつくんだ?」

「……う、嘘じゃないもんっ」

予想外の展開に混乱しながらも、嘘つき呼ばわりされた事に対してすぐさま反論した。

「っていうか、そんな阿久津君の心の声にぴったり沿った内容の嘘なんか、つける訳がないじゃない」

「当てずっぽうに言ったらたまたま当たっただけじゃないのか?」
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