ほしの、おうじさま
「だから周りには余計な事は言わない方が良いぞ。『超能力』と表現するにはあまりにもショボ過ぎるし、不思議ちゃんを通り越した超やべぇ奴だと思われちまうだろうから」

「い、言わないよ」


それでなくてもコミュニケーション能力に難があるというのに、そんな他人からますます遠巻きにされそうなネタを自ら暴露する訳がないじゃないか。


「あ、こんなとこにいた!」


するとその時。

右斜め下後方よりそう声がして、私は反射的にそちらに顔を向けた。

視線の先には7階フロアの廊下から、階段室内を覗き込んでいる野崎さんの姿があった。


「飲み物を買いに行ったんだろうと思って自販機まで探しに行ったらいなかったからさ」

「え…。わ、私に何か用?」

「さっき陣内課長が一瞬だけ会議室に戻って来て、『庶務課の係長の手が空いたようだから、もし可能ならば研修を10分早めたい』って言い出してさ」


言葉を繋ぎながら野崎さんは歩き出し、階段を上り始めた。


「だから今、席にいない人にもそう伝えておいてくれって言われて。んもー、せっかくこれからデザート食べようと思ってたのにー」

「えっ。ご、ごめんね?」

「いや、別にあなたのせいじゃないけどさぁ。あともう一個、課長からの伝言で…」
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