好きにならなければ良かったのに
「嫌だ、離さない。美幸は俺のものだ。俺の女だ。絶対に離すものか」
美幸を抱きしめる幸司の腕が少し震えていることに美幸が気付く。そして、すっぽりと包み込まれる幸司の胸が温かくて心まで蕩けてしまいそうだ。
やはり、幸司をどんなに愛しているのか思い知らされると、美幸は胸がキュンとなってしまう。
「だったらどうして直ぐに帰って来ないの?」
「……けないから」
「え? 今、なんて?」
「抱けないから……。美幸は妊娠してるんだ。なのに、美幸を見ていたら抱きたくて堪らないんだ。朝までずっとこの手で抱きしめたくてキスしたくなって。でも、美幸は妊娠しているからダメじゃないか。だから俺はジムで何とか体力使って気を逸らそうとしてたのに……」
幸司が自宅へ直ぐに帰らない理由が「抱けないから」と言う事実が判明し、美幸は呆気にとられて幸司の顔を見つめる。
「何だよ。俺は美幸の為に我慢して」
「バカよ」
妊娠しているからとそれを理由にされた美幸はあまりにも呆れてものが言えなくなる。
額に手を当てて思いっきり呆れる美幸の姿に、幸司は美幸の体調でも悪くなったのかと、美幸の膝裏に腕を回し抱きかかえるとベッドへと運んで行く。
「下ろさないで!」
「あ? 辛くないのか?」
「ううん、このままお姫様抱っこされていたいの」
美幸の要望とあればと、幸司は美幸をお姫様抱っこしたままベッドの前で立ち竦む。すると、美幸は幸司の首ったけに抱きついて首筋にチュッとキスをする。
「え……と、みゆき。そんな事したら折角俺がジムへ通っているのが無駄になるだろ?」
「いいのよ。だって妊娠しててもエッチはしてもいいのよ」
「え?……えええ?!」
幸司はてっきり妊婦とは出産が終わるまではベッドを共にしてはいけないと、そう思いこんでいた。まだ美幸のお腹は目立つほど膨らんではいなくても、そのお腹の中に自分の子どもが居ると思うと、抱きたくても抱いてはいけないものだと思いこんでいたのだ。
「その、……流産とかしないのか?」
「幸司が帰って来なくて心配かける方が流産に近くなるかも知れないわよ?」
「じゃ、その、俺ってやってもいいのか?」
恥じらいながら美幸が頷くと幸司の顔はみるみる内に笑顔へと変わり、それもかなり悦びを見せる。すると、さっそくベッドへ美幸を下ろし、腰に巻いているバスタオルをポイっと床へ放り投げる。
「……げ、元気いいのね?」
「ああ、美幸が抱けるんだ。今夜は眠らせないから覚悟しとけよ」
美幸は自分から誘ったようで苦笑してしまう。
「お手柔らかにお願いします……」