好きにならなければ良かったのに
美幸の姿を見た幸司はどこかホッとしている自分がいる。今、美幸がこの家を出て行けば自分の立場がどうなるのか、そんな事が頭を過ぎる。
「今はそんな事を考えている時じゃないのに……俺も冷たい男だよな。そんな俺の所に我慢してお前はいるんだよな」
少しやつれた感じの表情を見せる幸司。美幸のドレス姿を見ては眉間にシワを寄せ大きな溜息を吐く。今夜は早く帰るとわざわざ伝えていたにも関わらず、結局はいつも通り遅い帰宅をしてしまった。美幸に申し訳ないと思いながらソファーに眠る美幸を抱きかかえベッドまで運ぶ。
ベッドへ横たえた美幸のドレスの胸元が濡れている。そっと胸元に手を添えるとかなり濡れている部分が広がっている。
「このままじゃ風邪を引くぞ。おい、美幸!」
前髪も少し水気を帯びているのを見て、きっとこの姿のまま顔を洗ったのだろうと分かる。もしかしたら、今夜の食事の為にドレスアップをして化粧して待っていたのだろうかと美幸の額に手を触れて髪を撫でる。
いつもと違う可愛いドレス。美幸が普段着そうにないオシャレなドレスに幸司の口がギュっと締まる。
このまま放置も出来ず、美幸の胸元のボタンを外していく。しっかり濡れたそのドレスは冷たくなっていて美幸の肩も胸元も少しひんやりしているのが触れて分かる。何故、洗顔した後に着替えなかったのだろうかと思いながら全てのボタンを外しドレスを脱がせる。
脱がせたドレスはソファーへと投げやり、布団を肩まで掛けようとすると胸の谷間も少し濡れていることに気付く。下着姿になった美幸だが、そのブラジャーまで水で濡れていた。
「仕方ない、これも脱がすか」
そう言って美幸の背中へと手を回しブラのホックを外す。美幸が入社してからというもの、眠る美幸の服や下着を脱がせる日が続くが、それまでを振り返ると一体何時ぶりの事だろうかと、美幸のブラを外した日を数えてみるも、全くその日が分からない。かなり美幸には触れていなかったと考えていると、ふわぁっと香ってくる美幸のほのかな香りに鼻腔を突かれる。
「美幸、良い匂いだな」
香水なのか美幸の首筋からほんのりと香るとても爽やかな果物の様な香り。爽やかだがとても甘いその香りに幸司の食指が動きそうになる。しかし、相手は眠っている女だとブラだけ外すと布団を掛けてやる。外したブラもソファーへと放り投げるとベッドの端に座ったまま頭を抱え込む。