ワケありオンナとワケあり男子の共同生活


洗面器の中にお湯が入る。

台の上には洗面器以外に小さい入れ物に移し替えてあるボディソープと、タオルが置いてある。

あきくんは指の先で温度を確認すると、"失礼します"と言い、わたしの手をとり、洗面器を上に持っていく。

手にお湯が少しかかる。

「熱くないですか?」

温度確認は必ずしなさい、とセンター長が言っていた。

「大丈夫です」

実技練習中は、タメ口ではなく、丁寧な言葉で返す。

利用者(介護の世界ではお年寄のことを指すらしい)になりきらなければいけないから。

お湯に手が入る。

「暖かい」

こんな手だけをお湯につける機会なかなかなかったけど、これって結構気持ちいいんだ。

少しの時間何もせずにお湯につける。

こうした方が垢とかの汚れが浮いて、落ちやすくなるらしい。

しばらくすると、あきくんの手がお湯に入ってくる。

ボディソープがついた手がわたしの手を優しく触る。

あきくんに対しては年下の印象が強くて、あまり男という印象はなかった。

でも、このわたしに触れるこの手は間違いなく"男の人の手"だ。


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