再会は、健康診断で。
黒崎さんは、私より七歳年上の三十二歳だったはず。今流行りの塩顔で、優しいから健診部の事務さんたちにすごく人気があるらしいけど……本当になんで私?
「あの……口説く、とか冗談、ですよね? 私、黒崎さんと話したことあんまりないですし」
ホットサンドを食べながら頭に浮かんだ疑問を口にすると、ピラフを食べていた黒崎さんがじっと私を見つめてから微笑んだ。
「そうだね。でも俺、西川さんのこと好きになるなって今日確信したから、やっぱり口説くよ。一応確認なんだけど、彼氏とか好きな男とかいるの?」
「か、彼氏はいませんけど……」
黒崎さんに質問されてそう答える。彼氏どころか、好きな人だっていたことがない。なのに、なぜか平根の顔が浮かんできて自分でそれにビックリしてしまう。
なんで、あいつの顔が浮かんできちゃうんだろう。
たしかにちょっと好きだったことはあるけど、それは子供の頃の話だし。
あんなところで、私の意志を無視してキスするような男のことを好きなんて有り得ないのに。