再会は、健康診断で。
「あ、はい。大丈夫です」
断るわけにもいかなくて、携帯をポケットから出して黒崎さんと連絡先を交換すると、黒崎さんは満足げにニッコリと微笑む。
「連絡するから、今度デートしよう。片思いの彼以外の男を見ておくのも悪くないと思うよ」
「え、いや、あの……」
デ、デートとか、無理なんですけど。そう言おうとする私に片手をあげて、黒崎さんはさっさと私から離れてしまう。
「じゃあ、またね。午後の健診頑張って」
あっという間に遠ざかっていく背中を呆然と見送って、はあっとため息をつく。
す、すごい。完全に黒崎さんのペースに巻き込まれている気がする。
全然、反論する隙を与えてもらえなかった。
片思いの彼以外の男って、平根なんかより黒崎さんのほうが全然いい男だと思うけど。
もしお付き合いするならって思い描いてた理想像に黒崎さんはピッタリなのに、なんで平根がちらついちゃうの。
だめだ、完全にキャパオーバーです。とりあえず今はお仕事頑張ろう。
そう思って私は施設内で行う定期健康診断の準備をするべく、事務所に戻った。