再会は、健康診断で。

「うわ、降ってきた。西川、走って」


平根が私の手を掴んで、走り出す。それに引っ張られるようにして私も走り出した。だけど、勢いよく降ってくる雨に平根の車に着く頃には、ふたりともびしょ濡れになっていた。


「車、乗って」


「え、でもシートが濡れちゃうから」


「もー、そんなの気にしなくていいから。早く乗って」


助手席に平根に押し込まれるようにして乗ると、運転席に平根が乗る。


「西川、これ着て」


びしょびしょの服の袖で顔を拭った平根が、後部座席からグレイのパーカーを取って私に渡してくれる。


「え、でも……」

パーカー、濡れちゃうし。平根だってずぶ濡れなのに、私が着ちゃっていいのかな。


「いや、頼むから着て。西川に風邪引かせたくないし、ちょっと目のやり場に困る」


そう言われて自分の身体を見下ろすと、濡れた服から肌とか下着が透けてる。


「か、借りる」


慌てて平根のパーカーを着た私を見て、平根が少し笑った。


「そうして。つーか、俺の家行くわ。このままじゃ風邪引く」


そう言って車のギアを入れた平根を私はびっくりして見つめる。


「絶っっ対何なにしないから。頑張って我慢する。俺、もうちょっと西川と話したいんだよ。ちゃんと送ってくから」


車を停めたまま、眉を下げた平根が私の顔を覗き込んでくる。

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