再会は、健康診断で。

「ダメ?」


ハンドルを抱えるようにして上目使いで私を見た平根は、濡れているのもあって捨てられた子犬のようだ。


なんかこれを断るとか、すごく罪悪感を感じるんだけど。


「……わかった」


うなずくと平根の顔がパッと明るくなる。


「本当? やった、じゃあ行こう」


う、なんかパタパタ揺れるしっぽの幻覚が見えるんだけど。平根って本当はこういう奴だったのかな。


ニコニコしている平根の茶色い髪から、ポタポタと水滴が垂れているのを見てハッとする。


「待って、平根もちょっと拭いたほうがいいよ」


バッグからハンカチを出して、平根の顔とか髪を拭いていると、私を見つめていた平根がふっと笑う。


「西川は、前もそうやって雨に濡れた俺のことを拭いてくれたんだよな。そういうところが本当に好き」


そういえばそうだったかもと思っていると、平根の唇が私の唇に触れる。


あまりにも自然なその行動に先に驚いたのは平根のほうで、びっくりしたように身体を引いて窓ガラスに後頭部をぶつけてる。

< 96 / 240 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop