最期の時間を君と共に
誓の指先はずっと私の涙を拭ってくれている。思いきり……突き放してくれたら、どれだけ良いだろう。なんでこんなに優しいんだろう。

「行こっか」

「おぅ。なんかいるか?」

「なにもいらないよ」

「あ、まって。あとからでもいいか?すぐ行くから」

1度首を傾げたが、触れたくないのかなと思い、静かに頷いた。誓は勢いよくドアを閉めた。それを見届けてから、自分の家に入る。まずは冷蔵庫の中の確認だ。

「……あ、あるある」

2人暮らしの割に合わない卵の量。でも捨てているところなんて見たことないし、なんとかして使い切っているのだろう。
この卵の量を見て、オムライスを作ることに決めた。

初めてオムライスを作ったときは本当に苦戦した。ちゃんとそばにお母さんはいたが、私が1人でやると宣言したため、見ているだけなのだ。失敗ばかりでイライラが募っていくばかり。お母さんは一切手伝ってくれない。やめてやる、そう思ったとき――
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