君の隣で花が散る
「おそい」

「ごめん」

「べつにいい、はいこれ」


れおはぶっきらぼうに店のロゴが印刷された袋を私に押し付ける。


「買ったの?」

「ああ」


袋の中身は洋服一式だった。

緑のミリタリージャケットにアルファベットがお洒落に書かれている白いTシャツ、ショートパンツが入っている。


「あれ? 箱も入っているよ?」


あ、靴かな?


「靴も買ったの?」


私はそういいながら箱を開ける。


「ブーツだ」

「似合うと思ってな」


膝まであるやつではなく、くるぶしの少し上あたりまでの長さのだ。


「すごい......」


あまりのセンスのよさに言葉が出ない。

負けた。

完全にセンスは負けた。

何でこんなにセンスいいんだろ?


「気に入らないか? だったら返品してくるけど......?」

「ぜっんぜんそんなことないよ! 逆にお洒落すぎるくらい」


首をぶんぶんと振る。


「よかった」


れおの顔が安堵の表情になる。


そして笑った。

いつもみたいにあざ笑うのではなく、純粋な笑顔。


こんな顔もできるんだ。

優しくて穏やかで、見ているこっちまで微笑んでしまいそうな、そんな笑顔。


私はその笑顔をしばらく見ていたかった。
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