bajo la luz de la luna

―volver a casa

 ローサの屋敷に戻ってくると、何やら大きな木箱が届いていた。マルタに尋ねると、『旦那様と奥様からです。お嬢様にはこちらを預かっておりますよ』と言われ、赤い包装紙でラッピングされた小さな箱を渡される。

 開けてみると、エッフェル塔の可愛らしい置物が二つ。アタシと、もう一つはイリスにだろう。



『イリスは?』

『あぁ、あの子は髪を切りに“Bonita”へ。サマンサが連れていった筈ですよ。何でも、大好きな映画のヒロインと同じ髪型にしたいとかで……』

『あぁ、“You've got M@il”ね。あの子、メグ・ライアンに憧れてるみたいなの。
折角伸ばした綺麗なブロンドを切ってしまうのは勿体ないけど……イリスがメグ・ライアンになって帰ってくるなら喜んであげなくちゃね。』



 アタシが言うと、マルタは『そうですね』と答えてクスクス笑う。彼女はアタシの後ろに控えていたガルシア達に微笑んで、部屋を後にした。

 木箱を開けてみれば、中には数十本のワイン。同封されていた手紙には、アタシ以外の幹部と使用人達へ、と書かれてある。はいはい、未成年のアタシはイリスと一緒にミニ・エッフェル塔でも眺めるわよ……溜め息をついた、その時だった。
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