bajo la luz de la luna

―despedida penosa

 クリスマスだ、年明けだと騒いでいる暇は、アタシ達にはなかった。最近街では放火が相次いでいるらしく、警察からの相談も受けている。『犯人はどうせ未成年やむしゃくしゃした失業者だろうが、万が一凶悪な奴であれば、然るべき処置を取ってもらっても構いません』とのことだが、その“処置”とやらをなるべくしたくはないものだ。



『冬になると増えるのよね……火事とか放火とか。』

『夏もそれなりに多いだろ、火事は。バーベキューや花火があるからな。』



 吐く息を白く残しながら、物陰に隠れるアタシと群。その近くには、それぞれの部下達が同じく張り込んでいる。ここは覚せい剤の密売がよく行われている倉庫で、以前から気にかけてはいるのだけど、いつもあと少しという所で逃げられてしまうのだ。



『今日、この倉庫で取引があるって情報を入手してな。もしここで火事を起こされたらマズイだろ。一応消防車も二台呼んでおいたぞ。ローサの名前を出したら一発オッケーだった。』



 何処か楽しげに言う群を一瞥して、再び倉庫に視線を戻す。ここはローサの屋敷の近くにあり、当然ながら一般の民家も存在する。火災だけは、絶対に避けなければ。
< 208 / 268 >

この作品をシェア

pagetop