bajo la luz de la luna
『ボス、今日も色っぽいねぇ!』

『ありがとグレイ。ところで、今日のBGMはBLUEじゃないの?』

『あぁ、今日は持ってきてねぇんだ。ボスもたまには英語と日本語以外の曲を聴いた方が良いぜ!』



 車に乗り込んですぐ、ハイテンションな英語がアタシの耳に飛び込んできた。グレイ・サンダース。彼のイギリス訛りの英語は親近感が持てる。見た目はどう見ても20代前半なのに、実年齢はアタシの両親よりほんの少し年下の、40代後半らしい。長く綺麗な銀髪と澄んだ青い目は、全く年を感じさせないから不思議だ。

 グレイは現在ここ――スペインで流行っているという女性シンガーのCDをアタシに見せてきた。



『ボス、どうだい?』

『うーん……それなら聴いた。アタシは日本の宇多田ヒカルの方が好みだわ。この子の声ってただ甘いだけじゃない。力強さに欠けるわ。』

『おっ、言うねぇ!スペイン語圏最強のマフィアのボスは売れっ子歌手を簡単に撃っちまったぜ!!』



 グレイのジョークに、部下達はガハハと大声で笑う。アタシには全く通じないけどね。だって、笑うポイントが分からないんだもの。いつアタシがその“猫撫で声”を射殺したのよ。皆目分からないわ。
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