bajo la luz de la luna

―mi vida diaria

『あぁ、ごめん。アタシはいつもので良いよ。』



 手短に答えると、ガルシアが店員に『彼女にはいつものを』と告げた。店員の女の子はアタシに微笑むと、ふわりと礼をして店の奥へと消えた。

 マスターに挨拶することを思い出したアタシは、その旨を部下達に伝え、女の子の後を追って席を立つ。部下達はにこやかに手を振ってくれた。言いたい放題の小舅秘書を除いて。

 女の子はアタシが物音一つ立てずに近付いたもんだから、振り向いた時に動揺を隠し切れなかったみたいだ。あらら、可愛らしい。アタシが男だったら確実に手を出してるな、と思った。



『新人さん?初めて見る顔だわ。』

『はい!リラって言います!!お客様、先日もいらしてましたよね?すっごく美人です……えっと、日本人ですか?』



 緊張を和らげてやるため笑顔で話しかけると、彼女はニッコリ笑った。習いたてらしいスペイン語がとても可愛い。

 天使のようなブロンドの巻き毛とエメラルドの瞳が、小さい頃遊んだ人形を思わせる。可愛い妹分と被るキャラクターに、アタシは笑顔にさせられてしまった。幼い紫の上を育てたいと思った光源氏の気持ちが、少しだけ分かる気がする。
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