道の果て・・
そう思いながらも彼から目が
離せずにいた。

そして複雑な思いが胸の中に
渦巻いていた。
気付いて欲しい。
気付かないで欲しい。
どちらも今の私の感情だった。

彼は話し込んでいた人に会釈して
会場の方へ歩きはじめた。
その後ろ姿を私は遠くから
見送った。

夏生は私には気付かなかった。

ホッとした気持ちと
がっかりした気持ちで私は
立ち尽くしていた。

会場に入って行った彼が
突然、走って出ていた。

そしてその目の先には
私がいた。
彼が私の前まで来てゆっくりと
話はじめた。
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