ハルとオオカミ


「……きりーつ……」


沈んだ声で号令をかけると、先生がちょっと心配した顔で私を見てきた。ははは……。


ああ、五十嵐くん。参加しないなら参加しないってハッキリ言ってほしかったよ。むやみに期待させないでほしい。ファンは推しの行動に一喜一憂するんだから……。


愛が有り余りすぎてむしろ憎らしく思えてくる中、ホームルームが終了した。

クラスのみんながぞろぞろと教室を出てグラウンドへ向かう。


「はる。落ち込む気持ちはわかるけどさあ、あいつはそーいうやつだから仕方ないよ。グラウンド行こ~」

「うう~アキちゃーん……。ウソつかれたあ、ムカつく~。でも嫌いになれない……」

「うんうんわかるよ。あたしら、推しに振り回されるのが生きがいみたいなもんだからね。てかそれが天命だから受け入れるしかないよね」


アキちゃんになぐさめられながら教室を出て階段を降りていると、人の流れに逆らって階段を上がってくる人物がいた。



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