王太子殿下は囚われ姫を愛したくてたまらない
「……うん。本当」
「どうかしましたか?」
目を逸らすなんて、いつものシオンさんらしくない。
顔もうっすら赤いし……と思い見ていると、私をチラッと見たあとシオンさんが言う。
「いや、クレアがそんなキラキラした笑顔浮かべてるの初めて見たから……すげー可愛いなって意識したらなんか……」
もごもごと言うシオンさんに、はしゃぎすぎていた自分に気付いてハッとする。
まるで子どもみたいに振舞ってしまったかもしれないと思うと、今さら恥ずかしさを覚えた。
でも……見るモノすべてが私にとっては初めても同然で、興奮が止まない。
「ごめん。クレアは自由に感じたままはしゃいでくれていいよ。ただ俺がいちいち幸せに撃ち抜かれてるだけだから」
「……そんなこと言われて自由にはしゃげるわけないでしょう」
本当に照れているのか、シオンさんは困ったような微笑みで言うから、私の方が困ってしまう。
こんながっしりした身体してるくせに、ガイルだって倒しちゃう腕前のくせに、たったこれだけのことで撃ち抜かれて困った顔するなんて……やっぱりシオンさんはおかしい。
スズランの香りだけじゃない、甘いものが辺りを包んでいるように感じて落ち着かなくなって立ち上がる。
そして、同じように立ったシオンさんは見ずに口を開いた。
穏やかな風に、すずらんの小さな花が揺れている。
そのひとつひとつから鈴の音が聞こえてきそうだった。
「昨日、ガイルと話す機会をくださり、ありがとうございました」
シド王子から許しが出た……と言っていたけれど、進言してくれたのはシオンさんだ。
だからお礼を言うと、首を振ったのが視界の隅でわかった。
「俺は何もしてないから」
「それに……こうして、外に出してくれたことも」
「外って言っても城内だけどね」
申し訳なさそうに言うシオンさんに、今度は私が首を振る。