王太子殿下は囚われ姫を愛したくてたまらない
「俺の瞳、何色だかわかる?」
「え……青ですか?」
ブルートパーズみたいな瞳を見て言うと、シオンさんが目を細める。
「この色の花、見てみたくない?」
「……でも、青い花は、たしか確認されてないって聞いたことがある気がしますけど……」
今する話だろうか、と思いながらも首を傾げた私に、シオンさんが「そう」とうなづく。
「だから、青い花の花言葉は〝不可能〟らしいよ。でも、実は青い花を咲かそうって王宮の庭師が研究してるんだ。まぁ、いつ実を結ぶかはわからないけどね」
私の頭をポンと撫でたシオンさんが微笑む。
「その研究してるところを、今度見せてあげるよ」
「え……」
「だから、そんな顔してないで」
その言葉に……この場違いな会話の意味を知り、キュッと唇を引き結んだ。
たぶん、一刻を争うこの大事なときに、シオンさんは私の緊張を拭おうとしてくれたんだ……。
「大丈夫。クレアのせいじゃないし、無事解決するから。夕飯は一緒に食べよう。俺が部屋に行くまでいい子で待ってて」
まるで子どもにでも言い聞かすような優しい声に「はい」とうなづく。
シオンさんはそれを見るとふわりと笑い……それから、「ジュリア、クレアを頼む」と言い王宮へと走っていく。
その後ろ姿をしっかりと目に焼き付け、背中をピンと伸ばす。
さっきまで感じていた緊張はもうなかった。
シオンさんが綺麗になくしてくれたから。
「クレア様。お部屋に戻りましょう」
そっと背中を押すジュリアさんに……中庭を一度見渡してから静かにうなづいた。