久遠の絆
「と、言い過ぎたか!へへへ。ん、じゃあな!」


「え、中将?」


照れ隠しか、顔を赤らめつつ中将は一方的に通信を断ってしまった。


「相変わらず……」


背後でハウレン少将が、ぼそりと呟く声が聞こえた。












カイルは連日本営に詰めており、自邸からも王宮からも足が遠のいていた。



日課の皇帝詣でも休止中だった。


前線の兵たちと同様に睡眠時間も極めて少なく、疲労は極限まで達しているものと思われる。


だが彼がそのような素振りを見せることはない。


変わらず、精力的にやるべきことをこなしていく。


だがこの日本営を出たカイルは、戦況報告という名目で皇帝の許を訪れた。


彼にとって皇帝に会うということは、気の置けぬ旧友に会うということ。


もっとも本音を吐き出せる相手だということだ。


しかしそのような相手に会いたくなったということは、カイルがぎりぎりの状態であるということでもあるのだ。


久々のカイルの登場に、宮中の女性たちは色めき立った。


美貌の元帥の人気はいまだ健在である。


遠巻きに黄色い声援を受けながら、彼は例によってただ黙々と歩いていく。


回廊から奥へと続く扉に彼が消えた時、切ない溜息が辺りを覆い尽くした。


けれどそのことを当の本人は知る由もないのだった。



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