久遠の絆
皇帝はとてもやつれて見えた。


対面したカイルが一瞬息を飲んだほどだ。


直接軍の指揮を取ることはないが、それでもやはり彼は国の統治者なのだ。


戦況が伝われば、気に病むことも多いだろう。


敵が首都に迫っているとすればなおさらだ。


「お前も食べているのか?」


そう訊かれ、カイルは首を傾げた。


元来小食ではあるけれど、そう尋ねられるほど不摂生はしていないつもりだった。


だが。


「俺よりもひどいぞ」


「そう、ですか?」


自覚がない。


しかし言われてみれば、このところ睡眠時間と共に食事の時間も削っていたような気もしてくる。


自覚などはないのだが。


「お前は昔からそういう奴だった」


カイルは幼い時から、冷静沈着に見えて自分自身のことに関してはかなり無頓着だった。


ひとつのことに没頭すれば、衣食睡眠がかなりの確立で疎かにされる。


そうなった際には、周りがかなり気を付けて食事なり睡眠なり促してやらねばならなかった。


そうしなければ彼の体は衰弱する一方だっただろう。


けれど周りが促してさえ、彼はいっこうに気にした様子はなく、「大丈夫なのに」などと言いながらスープを一口二口口に運ぶくらいで、また手元に意識を向けてしまう。


そんな時は……。


「あいつが声を掛ければ、お前は正気に戻っていたな」


ジュラークⅠ世は苦い笑みを零しながら、そう言った。


「もう、忘れました」


シドのことなど、当の昔に忘却の彼方に追いやってしまった。
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