久遠の絆
そう言うカイルに、しかしジュラークⅠ世は、


「忘れられないから、お前も私も、こんなに苦しいんじゃないか」


「……」


一瞬カイルの表情が強張った。


自らはあえて目を逸らしている事実を、旧友の皇帝は否応なく突きつけてくる。


もはや相容れぬ敵だと思い込んでしまいたいのに。


「本当にそうか?……いや、このことを話し合うのはよそう。お互い前に進めなくなってしまうからな」


そんな皇帝の言葉に、カイルもこの時は素直に頷いた。


シド・フォーンは今や帝国の敵なのだ。


そのことだけを胸に刻んでいればいい。


情けは無用。


この国に、皇帝に、彼が砲火を放ち続ける限り、彼は倒すべき存在なのだから。


「それで、ちゃんと食べてるのか?」


「もうそのことは……」


「いいや、だめだ。人間食べなきゃ持たないぞ。今運ばせるから、食べて行け」


「……ここで、ですか?」


「そうだ」


「ご冗談を」


「冗談なものか。……ここがそんなに嫌なら、アニーシャの部屋でも構わんが」


「……」


冗談でも御免だ、王女の部屋など。


「なら、ここで」


ジュラークⅠ世がそう言いうとすぐに、皿の載った盆を掲げた女官達が部屋に入って来た。


「用意の良いことで……」


「お前がそんな状態だろうってことぐらい、予想の範疇だ。何年付き合ってると思うんだ」


カイルにはもう抗う気などないのか、素直に豪勢な食事に手を伸ばした。
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