久遠の絆
「ご覧になっていないで、陛下も召し上がってください」


「ん?ああ、ぶどう酒くらいなら」


「だけでなく、食事も」


「あんまり欲しくないんだが……」


「私に散々言っておいて、ご自分は逃れようなんて虫が良すぎます。召し上がってください」


有無を言わせぬ強い口調でカイルは言った。


「分かったよ……」


ふたりは黙々と食べ始めた。


その間カイルは改めて、何日かぶりにまともな食事を摂ったことを思い出していた。


皿の上の料理があらかたなくなった頃。


ジュラークⅠ世が思い出したようにぼそりと呟いた。


「アニーシャとの婚約、急いでくれるか?」


カイルは口まで運んでいた肉を、ポロリと落としてしまった。


「婚約……ですか?」


「まあ、お前としてはこの有事が終わってからと考えていただろうが、それでは遅い。俺にもしものことがあったらどうする?」


「……」


「俺が死ねば、王位継承者はアニーシャただひとり。だがあいつに国政を担う器はない」


「そう、でしょうか?」


「そうでないと言えるか?そうなった場合、誰が見ても納得の出来る伴侶が必要になる。……お前しかいないんだ、カイル。」


「……」


「この有事の間に俺が命を落とすことは十分考えられることだ。一刻も早く、アニーシャに“夫”が必要なんだ。カイル、お前だってそう思うだろう?」


「……」


「ダンドラークを滅ぼしてはならない。如何なる手を用いても、帝国はあり続けなければならないのだ。それが、この世界の安寧に繋がるからだ。皇帝が存在し続ければ、帝国が滅びることはない。
しかし皇帝も愚鈍であれば意味がない。お前には、愚鈍な皇帝を補佐する優秀な伴侶となってほしいのだ」


「……」

< 207 / 810 >

この作品をシェア

pagetop