久遠の絆
カイルは瞼を閉じ、黙考している。


しかし彼が出すべき答えは、ただひとつ。


「御意」


それがこの国の存続する最良の方法なら、否やなどあろうはずはない。


自分の意志など関係なかった。


政(マツリゴト)の前では、自身の感情など無きに等しい。


ただ一途に国益を思うのみ。


カイルの姿勢は一貫して、そうだった。


それが結婚という人生の大事であっても、だ。


「早急に、婚約の儀までの日程を調整致しましょう」


そのカイルの言葉に、ジュラークⅠ世は満足そうに頷いたのだった。


栄養補給を終えると、久々に充足感があった。


「もっと自分を労われよ」


別れ際、自らのことは棚に上げて皇帝が言った言葉を思い出す。


本営に戻ったカイルは、自室でひとりこれからのことを考えていた。


(まずは、婚約……か)


さすがのカイルも、なんとなく気が重い。


(世が平和な時であったなら)


自ら選んだ相手と添い遂げることも出来ただろう。


だが……。


今は帝国が存続するか、滅びるかの瀬戸際だった。


(私欲など、とっくに捨てたと思っていたのだが、なかなかうまくはいかないものだな)


まだまだ青い、と思う。


アニーシャといずれはこうなると分かっていたのに、ここに来て、どうしてこれほどに逡巡するのか。


皇帝の意を受け喜んで事を進めるべき時に、何を迷っているのだろう。

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