久遠の絆
『イーファン。蘭に返してあげて』


「セイア」


『奪われるのは、とても辛い』


悲しげに眼を伏せるセイアを、イーファンはじっと見つめた。


『心を奪われるのは、嫌じゃ』


イーファンの身体はいよいよ薄く透明になってきた。


『力を使える間に、早く!』


促され、意を決したようにイーファンが振り向いた。


「どんな時も心を強く、負の感情に囚われないと約束できますか?」


「イーファンさん……」


「どんなに辛くても死なないと、誓えますか?」


「わ、わたし。もう黒い男には負けません。どんなことがあっても、勝ってみせる」


イーファンは嬉しそうに微笑んだ。


「いいでしょう。あなたの言葉を信じて、あなたの恋、お返しします」


イーファンがそう言った途端、蘭の心にぱっと光が灯った。


その光の中で、心の中にぽっかり開いていた穴が、見る間に閉じていく。


その衝撃に、蘭は思わず悲鳴を上げ、その場にうずくまった。


「蘭、大丈夫か?!」


シドがその身体を抱き止める。


「大丈夫か?」


「う、うん。イーファンさん、何をしたの?」


そう聞きながら顔を上げると、すでにイーファンの姿はなかった。


セイアも消えてしまっている。


「イーファンさん!セイアさん!」




『あなたは辛い思いをしたからこそ、強い。どうか自分を信じて、この世界を、宇宙を救って下さいね』




イーファンの声だけが風のように聞こえてきて、風のように消えていった。




何百年という長い生を終え、イーファンは恋人と共にあるために逝ってしまった。


生身の身体がなくても、心があるから、だから幸せ。


蘭は、そう言って微笑むイーファンとセイアの姿を見たような気がした。








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