久遠の絆
蘭は、イーファンに奪われたものが何であったかを思い出していた。


すっきりとした気分だった。


頭の重たいような、痛いような、そんな感じも綺麗になくなっている。


「イーファン、何をお前に返すって?」


シドが怪訝そうに尋ねた。


「うん、とても大切な、掛け替えのないものを」


「ふうん?」


「何だ、それ?」


マトも聞いてきた。


「へへへ。なんて言ったらいいのかな。誰かを好きになる気持ち?」


男性陣は複雑そうな表情になった。


「蘭が?誰かを好きになる?」


「ひょっとして、もうなってるの?」


「おま、そんな核心ついてどうすんだよ」


シドがマトの頭を小突いた。


「好きに?分からない。その人はずっと大切な人だったけど、それが恋なのかどうか……」


シドはカイルの顔を盗み見た。


彼は一歩引いたところで、蘭を見つめていた。


その表情からは、彼の思いは読み取れなかった。


「蘭の感情のままに任せればいいよ」


マヤが言った。


「感情のままに?」


「そう。考え過ぎは良くないからさ。いつか、それが本当に恋だと分かる時が来るよ」


「マヤ……。何か、実感こもってるね」


「え、そ、そんなことないよ。想像だけどね、想像」





「こんな時に、よく好いた惚れたと話が出来るねえ」


シェイルナータの声が響いた。



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