ホテルの“4つのクリスマスストーリー”

「結婚」という具体的過ぎるワードを出すのが怖い。

今この言葉をふたりの空間に持って来てしまうだけで、現実感が一気に襲ってきそうだ。そしてそのシビアな現実感に、今のわたしたちが押し潰されずにいられるかもわからない。

でも“クリスマス”という浮き足立ったこのイベントが、少しだけわたしの背中を押してくれた。

目をぎゅっと瞑って、カードを切るようにあの言葉を喉元まで運ぶ。


「それでね、けっ・・・」

『ちょ、ちょっと待ってちょっと待って!!』


!?


彼が小さく叫んでわたしの開きかけた口を大きな手で思いっきり塞いだ。

わたしは唖然としながらも、息が苦しくなって彼の腕を掴む。


「・・・ちょっと!何!?」

『ごめん!』


終わった。

ごめん、って・・・。


「もういいよ、わかってたし」


わたしは半べそをかきながら、その無様で不細工な表情を見られないよう彼とは反対の方へ顔を向けた。


『じゃなくて』


彼がわたしの肩をそっと掴んで、自分の方へ向き直させる。


『ほんとはおれから言うべきだったのに・・・意気地なしでごめん・・・

・・・ワガママかもしれないけど、最後はおれに言わせて』


わたしの手から空になったコップを奪い取り、自分のものと一緒に捨てた。


『ってことで、ちょっと来て。映画はまた今度』

「来てって、どこに?」


『君の好きな場所で、これからおれたちの思い出になる場所』


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