ホテルの“4つのクリスマスストーリー”

彼がわたしの手を引っ張りずんずん歩くと、あっという間にホテルの前まで来てしまった。

目の前にあるのは、憧れの「ウェスティンホテル」。

エントランスからすでにクリスマスのワクワク感に彩られて、定番カラーの緑と赤に加えて使われたシルバーと紫が、ヨーロピアンクラシックに拍車をかける。

黒光りした馬車を横目に中へ入ると、大きくそびえ立つクリスマスツリーが視界いっぱいに広がった。

ツリーの根元につくられた小さな街には屋根に薄く雪の積もる家があり、汽車が走っている。

街の外側にはだんだんと現実に戻ろうとするように、ジオラマとこの世界の中間くらいの大きさをしたベンチが置かれ、座っているふわふわのテディベアたちが街のミニチュア感を引き立たせる。

外国人のゲストが他のホテルに比べて圧倒的に多いことも相まって、ここが日本だということをまるで忘れてしまった。

ウェスティンとクリスマス、なんて相性がいいのだろう。

淡い紺色の大理石でつくられたエレベーターの扉が開くと、容易く非日常に飲み込まれた。

逐一感動しているうちに案内されたのは、スイートルーム。

ウェスティン特有のホワイトティの香りは、ロビーから部屋の中までぬかりない。雰囲気に酔って昇天してしまいそうになる自分を必死に下界に連れ戻しながら彼の方を見ると、満足げに笑っている。


「これ、どういうこと・・・?」


彼が「キザ」とは正反対のところにいるのをずっと見てきたわたしにとって、今目の前にいる人はまるで別人のようだった。


『プロポーズ』


「意味わかんない。いつから準備してたの。聞いてない」


あまのじゃくなわたしは、嬉しいくせにわざわざ可愛くない反応をしてしまう。


『ちょっと前から』


「結婚のことなんて、いちども言わなかったくせに。それに普段こんなことしないじゃない」


『いいじゃん、今日くらいカッコつけさせてよ。って、すでにカッコ悪いよね。

鈍感でごめん。たくさん悩ませてごめん。』

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