100回の好きの行方
 しばらくして、機嫌よくデザイン部に帰ってきた菜月は、着物の女性を見て不思議そうな顔をしていた。

 菜月は、彼女が霧加屋ギャラリーの社長だとは知らなかったのだ。

 貴乃が、ちらりと菜月を見て"あなだが、深山菜月さん?"と、ニコリともせずに話かけられたため、菜月は何かを感じとりビクリとしながら、小声で頷いた。

「霧加屋ギャラリーの霧加屋です。……このデザインについて説明してくれませんか?」

「えっ?」

 菜月は、差し出されたタブレットを見て目を見開いたものの、すぐさま笑顔を浮かべた。

「霧加屋さまも気にいって頂けましたか?私の渾身の作品です。」

「そうですか。長い間、新作の発表がなかったようですが。じゃぁ、この作品は、最近思い付いたものだったんですね。」

「はい、恥ずかしいですが、やっとスランプから抜け出して、やっと出来上がりました!」

 菜月は笑顔で話し、貴乃はどこか冷やかな態度でいるため、その温度差に周りは異様さを感じるが、菜月は気がついていないようだ。

 誰も口を挟めずに、二人のやり取りを眺めていた。

「私もデザインをするんですよ。あなたはスケッチ派?CG派?ぜひ、この指輪のデザイン画を拝見させて欲しいわ。」

「えっ!?」

 その時の、まずい、どうしようと困惑した表情の菜月の顔を、貴乃もみんなも見逃さなかった。

 
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