密かに恋焦がれて
康成は玄関の隅に置いてあるバッグを持つと行ってしまった。
琴美が来たときにはたしかにバッグは置いてあったが特に気にも止めてなかった最初から家に止まるつもりで用意してあったのだろう。
立ち尽くしてると座れと声をかけられた。
顔を合わせるのを少しでも遅らせようとわざとゆっくり戻る。
「お前逃げてばっかりだな。
無視しまくってくれるしあげくに言いたいことだけ言ってこっちに話す機会もくれない。さて今からじっくり話そうか、なぁ琴美」
琴美は追いつめられ顔をひきつらせると
ヒロは片側の唇をひき上げて笑った。
琴美には悪魔にさえ見える。
ひいいぃぃっ!
黒い、黒すぎる!
反射的に立ち上がり足は玄関の方へ進もうと焦りもつれた。
あっ!
まずいと思ったときには倒れそうになっていた。
「危ねぇ……大丈夫か?」
どうやらヒロが助けてくれて倒れずにすんだようだけど違和感がある。
何これ、ヒロの手が胸の辺りに……
「……離してよ」