この恋を、忘れるしかなかった。
「だからぁー…」
美雪ちゃんは、わたしと同じくらいの胸下まである長い髪を束ねながら、半ばあきれている様にも見えた。

「美雪がね、結婚生活について聞きたいって」
割って入ってきたのは、(はやし)恵都(けいと)、恵ちゃんも美雪ちゃんと同じ2年3組の生徒。

「えーっ、結婚生活?」
秋ーーー10月の夕方はいくらか肌寒く感じ、それでも、夕陽に照らされた木々の葉のその煌めく様は、見ていて飽きることなく、枯れるまいと踏ん張っているみたいだった。


「わたし子供いないし専業主婦でもないし、う~ん…普通、かな」
「普通?何が普通なのー?全然わかんないしー!」
そう言って、髪を束ね終えた美雪ちゃんが少し笑った。

「さすがリカちゃん先生」
「ちょっと恵ちゃん、さすがってどういう意味よ?」
「きゃはは、ごめんなさーい!」
わざと大げさにリアクションする恵ちゃんを見て、わたしと美雪ちゃんも笑った。


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