この恋を、忘れるしかなかった。
「本当に好きな人と…って、リカちゃん先生が言うと何だか意味深〜。旦那さんと上手くいってないの?」
恵ちゃんはスパっとものを言う子だから、たまにドキっとさせられる。
「やめてよ、どこにでもいる普通の夫婦だから」
額の汗を拭う思いだ。
結婚生活に大きな不満はないが、大きな幸せを感じた事も……夫には申し訳ないけど、ない。
特にケンカや衝突もなく、いたって平凡ーーーだからわたしは、普通だと答えた。
それ以外、答える事がないのも…少しさみしいけど、これが事実。
「てかさ、リカちゃん先生って、高校の時とか絶対モテたでしょ?」
「なに言い出すのよ、美雪ちゃん」
「あーっ、あたしもそれ思ってたー。今でもかわいいし、三十路に見えないもん!」
恵ちゃんも会話に入ってくる。
「三十路はやめて…わたしまだ29だし」
「あはは!」
かわいいと言われるのは女として喜ばしいことだけど、こうしてたまにいじられる事もある。
「男子から告られたりするでしょ?美雪たちに白状しろ~」
「ないない、そんなの。…さてと、ぼちぼち帰らなきゃね。美雪ちゃんも恵ちゃんも、帰って宿題しないと」
「えーっ、もう?宿題とか無理~。てか美雪の話、スルーしたでしょ」
美雪ちゃんが、不満そうにわたしの顔を見る。
「今日リカちゃん先生部活ないんだし、もう少し良くない?」
恵ちゃんも引きとめモード。
そう、毎週水曜日は部活動がないーーー美術部の担当をしているわたしは、水曜日にこうして教室に残ることが、少なくなかった。
「だーめ。帰ってご飯の支度するの」
わたしはぼんやりと、薄暗くなってきた空を見つめながら言った。
「働く主婦は、ヒマじゃないんだぞ」
そう付け加えたわたしが、立ち上がろうとした時だった………。
ガラッ
教室の扉が、勢いよく開いた。
「あれ、どうしたの?霧島くんじゃん」
恵ちゃんが、開いた扉から現れた生徒に声をかけた。
恵ちゃんはスパっとものを言う子だから、たまにドキっとさせられる。
「やめてよ、どこにでもいる普通の夫婦だから」
額の汗を拭う思いだ。
結婚生活に大きな不満はないが、大きな幸せを感じた事も……夫には申し訳ないけど、ない。
特にケンカや衝突もなく、いたって平凡ーーーだからわたしは、普通だと答えた。
それ以外、答える事がないのも…少しさみしいけど、これが事実。
「てかさ、リカちゃん先生って、高校の時とか絶対モテたでしょ?」
「なに言い出すのよ、美雪ちゃん」
「あーっ、あたしもそれ思ってたー。今でもかわいいし、三十路に見えないもん!」
恵ちゃんも会話に入ってくる。
「三十路はやめて…わたしまだ29だし」
「あはは!」
かわいいと言われるのは女として喜ばしいことだけど、こうしてたまにいじられる事もある。
「男子から告られたりするでしょ?美雪たちに白状しろ~」
「ないない、そんなの。…さてと、ぼちぼち帰らなきゃね。美雪ちゃんも恵ちゃんも、帰って宿題しないと」
「えーっ、もう?宿題とか無理~。てか美雪の話、スルーしたでしょ」
美雪ちゃんが、不満そうにわたしの顔を見る。
「今日リカちゃん先生部活ないんだし、もう少し良くない?」
恵ちゃんも引きとめモード。
そう、毎週水曜日は部活動がないーーー美術部の担当をしているわたしは、水曜日にこうして教室に残ることが、少なくなかった。
「だーめ。帰ってご飯の支度するの」
わたしはぼんやりと、薄暗くなってきた空を見つめながら言った。
「働く主婦は、ヒマじゃないんだぞ」
そう付け加えたわたしが、立ち上がろうとした時だった………。
ガラッ
教室の扉が、勢いよく開いた。
「あれ、どうしたの?霧島くんじゃん」
恵ちゃんが、開いた扉から現れた生徒に声をかけた。