神様修行はじめます! 其の五
「朝からずいぶん騒がしいと思ったら、やはりお前だったか。滅火の娘」


「あ、クレーターさんおはよ……って、うおお!?」


 クレーターさんの姿を見て、またまたビックリ。


 だってクレーターさんてばグレーのスーツ姿なんだもの! しっかりネクタイも締めて、一般サラリーマンに変身しちゃってる。


 頭の薄さが中間管理職っぽい雰囲気だけど、めっちゃ着慣れない感ビシバシ漂ってて、そこが奇妙に初々しい。


「クレーターさーん! どっからどう見ても、父兄参観日に教室の後ろで緊張して立ってるお父さんだよー!」


「それは褒めているのか? 貶しているのか? このようなキテレツな恰好は初めてなので、純粋に分からん」


「大丈夫、けっこう似合ってるから」


「そうか? だが、この色が気に入らん。小浮気一族の衣装は白と決まっているのだ。白はないのか白は?」


「いまどき白スーツとか、ホストでも着ないって……」


「嫌におじゃりまする~。麻呂は、こんな恰好は嫌におじゃりまする~」


 襖の陰からマロさんの声が聞こえる。


 マロさんも変身したのかな? どんな格好してんだろ? なんかちょっと楽しみになってきた。


「こりゃ典雅。いつまでも我が侭を言うておらんで、こっちに来んかい」


 絹糸にせっつかれて渋々姿を現したマロさんの姿は……。


「……け、建設作業員?」


 情けない顔のマロさんは、上下お揃いの紺色の作業着姿だった。


 しかもヘルメットまで装備してて、実に演出が細かい。ホントにどこの誰が揃えたんだか、この衣装の数々を。


「うう、マロはこのような姿は、嫌におじゃりまする……」


「お前が、なんとしても帽子を被りたいと主張したのじゃろうが」


「こんなのは烏帽子におじゃりませぬ! 麻呂が被りたいのは立烏帽子におじゃりまする!」


 あー、そのヘルメット、いつもマロさんが被ってる烏帽子の代わりなのね?


 平安時代の烏帽子って、男の尊厳の象徴だったらしいからなぁ。なにかを自分の頭に乗っけたくてたまらなかったのね?


 で、探したらヘルメットがあって、それに伴って必然的に彼の衣装は建設作業員に決定したと。
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