神様修行はじめます! 其の五
 誰だって、赤ちゃんを自分の手で殺すなんてのは嫌だ。


 殺さなきゃ自分の命が危険になってしまうような、極限の状況に追い込まれていたとしても、赤ちゃんの首を絞めるのはためらうだろう。


 この異形の声には、そんな本能を強烈に駆り立てる作用があるんだ。


 実際、我が子を殺されかけた絹糸ですら、九尾に反撃できないでいる。


 絹糸は『親』だから、赤ん坊に対する庇護欲にはどうしても逆らえないんだ。


―― ホギャア……ホギャア……


 弱々しくも哀れな、庇護を求める弱者の泣き声が頭の中にたっぷりと充満して、あたしの思考を支配する。


 酒に酔ったように急速にボヤける意識は、『赤ん坊を守りたい』としか考えられない。


 ……あぁ、どうか泣かないで。大丈夫だから。


 絶対、あなたにヒドイことなんかしないって約束するから、安心してね?


 大丈、夫、だよ……。だぁい……じょう……ぶ……。


 あたしは床の上にダランと身を横たえながら、薄っすらと微笑んでいた。


 脳裏には、あたし以外に頼る者のない可愛らしい赤ん坊を腕に抱き、あやす自分の姿が浮かんでいる。


 ふふ、とってもかわいい。あたしがちゃんと守ってあげる……
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