神様修行はじめます! 其の五
「待っておれ、今、いくぞ……」
体に無数の骨が突き刺さったまま、絹糸がジリジリとこっちに向かって動き出した。
セバスチャンさんが目を吊り上げて怒鳴り声をあげる。
「おい絹糸、なにバカなことしてやがる! こんな状態で動くんじゃねえよ!」
「我が子が、我を、呼んでおるのじゃ。行かずして、なんとする……」
絹糸が強引に身動きするたび、九尾の骨が絹糸の体内にメリメリと入り込んでいくのが、ここからでも確認できた。
白い骨に絹糸の血が大量に伝い落ちて、不気味なほどヌラヌラした暗い赤色に染まっていく。
「このクソバカ絹糸! 動くんじゃねえって言ってるだろうが!」
「こんな骨、動いているうちに、自然と抜けるわい……」
「ふざけんなテメエ! 抜けたら抜けたでヤバイんだよ! ノドに刺さった魚の小骨と一緒にするな!」
額に青筋を浮かべて怒鳴り散らすセバスチャンの全身から、ドス黒い怒りのオーラが轟々と噴出している。
でもその声は、怒りの感情よりも焦燥の色が濃い。
「人がせっかく全力で助けようとしてるケツから、自殺行為に走るんじゃねえ!」
第六天魔王の本気の罵声を物ともせず、絹糸は動く。
その体からはさらに大量の血液が、音が聞こえんばかりにドクドクと流れ出し、九尾の骨ばかりか床までジットリ濡らした。
それでも気高い黄金色の瞳は、我が子の元へ行こうとする強い意思によって爛々と輝いていた。
「我が子、よ……」
「にい、ぃ~~……」
「我が、子、よ……」
「に、ぃ……」
「我が子、よ……」
「…………」
「ど、うした? 我が子、よ……?」
「…………」
最後の力を振り絞り、絹糸の呼びかけに答え続けていた子猫ちゃんの声が、ついに途絶えた。
「こ、子猫ちゃん……?」
この頼りない沈黙が、怖い。
すごく怖くてたまらなくて、あたしは自分の体の下にいる子猫ちゃんの姿を見ることが、どうしてもできなかった。
「……子猫ちゃん。お願い、答えて」
震えながら問う声に、やはり返事はなかった。
沈黙の空気が、深く静かな絶望の色に変わっていく。
その絶望を拒否するために、あたしは、なけなしの勇気を必死に振り絞ってそっと自分の下に視線を移した。
そして……。
「…………」
そして、残酷な現実を見てしまったあたしの目から涙がほとばしり、唇から抑えきれない嗚咽がもれる。
「う……う、うぅ……」
ワナワナと泣き濡れるあたしの姿を見た絹糸の表情がサッと変わる。
それでも、絹糸は我が子に向かって呼びかけることをやめようとはしなかった。
「わ、我が子よ、答えよ。どうか、答えてくれ……」
絹糸の黄金色の目が、粒のような小さな光をキラリと弾く。
「たのむ、答えてくれ。お前だけは……我を置いて、逝くな……」
体に無数の骨が突き刺さったまま、絹糸がジリジリとこっちに向かって動き出した。
セバスチャンさんが目を吊り上げて怒鳴り声をあげる。
「おい絹糸、なにバカなことしてやがる! こんな状態で動くんじゃねえよ!」
「我が子が、我を、呼んでおるのじゃ。行かずして、なんとする……」
絹糸が強引に身動きするたび、九尾の骨が絹糸の体内にメリメリと入り込んでいくのが、ここからでも確認できた。
白い骨に絹糸の血が大量に伝い落ちて、不気味なほどヌラヌラした暗い赤色に染まっていく。
「このクソバカ絹糸! 動くんじゃねえって言ってるだろうが!」
「こんな骨、動いているうちに、自然と抜けるわい……」
「ふざけんなテメエ! 抜けたら抜けたでヤバイんだよ! ノドに刺さった魚の小骨と一緒にするな!」
額に青筋を浮かべて怒鳴り散らすセバスチャンの全身から、ドス黒い怒りのオーラが轟々と噴出している。
でもその声は、怒りの感情よりも焦燥の色が濃い。
「人がせっかく全力で助けようとしてるケツから、自殺行為に走るんじゃねえ!」
第六天魔王の本気の罵声を物ともせず、絹糸は動く。
その体からはさらに大量の血液が、音が聞こえんばかりにドクドクと流れ出し、九尾の骨ばかりか床までジットリ濡らした。
それでも気高い黄金色の瞳は、我が子の元へ行こうとする強い意思によって爛々と輝いていた。
「我が子、よ……」
「にい、ぃ~~……」
「我が、子、よ……」
「に、ぃ……」
「我が子、よ……」
「…………」
「ど、うした? 我が子、よ……?」
「…………」
最後の力を振り絞り、絹糸の呼びかけに答え続けていた子猫ちゃんの声が、ついに途絶えた。
「こ、子猫ちゃん……?」
この頼りない沈黙が、怖い。
すごく怖くてたまらなくて、あたしは自分の体の下にいる子猫ちゃんの姿を見ることが、どうしてもできなかった。
「……子猫ちゃん。お願い、答えて」
震えながら問う声に、やはり返事はなかった。
沈黙の空気が、深く静かな絶望の色に変わっていく。
その絶望を拒否するために、あたしは、なけなしの勇気を必死に振り絞ってそっと自分の下に視線を移した。
そして……。
「…………」
そして、残酷な現実を見てしまったあたしの目から涙がほとばしり、唇から抑えきれない嗚咽がもれる。
「う……う、うぅ……」
ワナワナと泣き濡れるあたしの姿を見た絹糸の表情がサッと変わる。
それでも、絹糸は我が子に向かって呼びかけることをやめようとはしなかった。
「わ、我が子よ、答えよ。どうか、答えてくれ……」
絹糸の黄金色の目が、粒のような小さな光をキラリと弾く。
「たのむ、答えてくれ。お前だけは……我を置いて、逝くな……」