神様修行はじめます! 其の五
―― カアァァ……!


 ギュッと閉じた目蓋が、急激な白い光彩を感じた。


 ビックリして目を開けて身を起こすと、体中がキラキラした真っ白な光の渦に包まれている。


 こ、これ、門川君の術陣?


 子猫ちゃんを治癒していた術陣が、信じられないほど強烈な威力を発して輝いている!


「皆、しっかりしたまえ!」


 あたしはビクッを背筋を伸ばし、その声の聞こえた方向に振り向いた。


 龍に向かって術を発動している門川君が、視線だけをこっちに向けて、口からツバを飛ばす勢いで檄を飛ばしている。


「この忙しい時に、なにを勝手に自己完結しているんだ! まったく情けない! 特に絹糸!」


 身を震わせながら慟哭している絹糸に、門川君は凄まじい怒りの表情で声を張り上げた。


「お前が一番情けない! 親のお前が、我が子の命を真っ先に諦めてどうするんだ!」


 治癒の術陣の光が、目に痛いほど強烈な輝きを放つ。


 門川君の言葉通り、彼は子猫ちゃんを救うために、諦めることなく最高の威力を発揮していた。


 で、でも門川君……。


「子猫ちゃんは、もう……」


 その先の言葉を、絹糸の前で口にできないでいるあたしに、門川君は眉間にシワを寄せながら答える。


「ああ、そうだ。死んでいる」


「ちょ、そんなこと……!」


「キミは『蘇生術』という言葉も知らないのか?」


 門川君はますます眉間のシワを深くして、『やれやれ』といった表情で言った。


「一時的に心肺が機能停止しても、的確な処置を与えれば助かる可能性があるんだよ」


「……え!? い、今なんて言った!?」


 ガックリと首を垂れて涙を流していた絹糸が、弾かれたように顔を上げて門川君を見た。


 あたしも心臓をバクバクさせながら、門川君に向かって叫び返す。


「助かるって言った!? 今、助かるって言ったの!?」


「『助かる可能性』と言ったんだよ。希望的観測にすがって、都合よく人の言葉を捻じ曲げないでくれたまえ」


「そ、そんなこと言ったって!」


 この状況で、仮にも『助かる』なんて単語を聞かされちゃったら!


 そりゃーアンタ、思いっきりすがるわ根性入れて全力で捻じ曲げるわ!
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