神様修行はじめます! 其の五
「ですが、いくらあなた様とはいえ、それも長くは続きますまい。もはや終焉は目の前でございます」
門川君はなにも答えない。
地味男の言葉を無視するように淡々と術を発動し続けているけれど、実際のところ、地味男の言う通りなんだろう。
このまま永遠に『道』の影響を押さえ続けてはいられない。彼の術が力尽きたそのときが、ジ・エンドだ。
「地味男! もうやめ……ゲホゲホッ!」
地味男に向かって叫んだ声は、途中で咳になって途切れてしまった。
ちょっと大きな声を出そうとするだけで、ノドが細い爪に引っかかれたようにジリジリする。
異界の空気を吸ってるダメージが、どんどん沈積され続けているんだ。
ノドに手を当てながら涙目で咳き込んでいるあたしに変わって、絹糸が言葉を続けてくれた。
「蛟よ、もうよせ。我とてお前の気持ちは理解できる故、『復讐するな』とまでは言わぬが」
絹糸の言葉を、地味男はヒザを正したまま黙って聞いている。
でもその目は、相変わらず自分の望みに賭ける者特有の、揺るがぬ色を宿していた。
「じゃが復讐とは、落としどころが肝要なのじゃ。もう充分であろう。これ以上は誰も喜ばぬ」
水晶さんの死の直接の原因となった、蛟の前長老と長兄は葬った。
妹を救うよりも秘密を守ることを優先した水園さんを、自分の企みに利用し、その精神を極限まで追いつめた。
なにも知らずに姉の命を選んだクレーターさんに事実を知らしめ、絶望の淵に追いやった。
絹糸の言う通り、もう十分だ。これ以上復讐の刃を振りかざす必要はどこにもない。
「お前が愛した女はもう、死んでいる。死者は、生者が何をしたところで泣きもせねば笑いもせん。お前は、ただ理屈が欲しいだけじゃ」
神の一族の世界を守るために、現世を生贄にする。
そんなこと、水晶さんは夢にも考えていなかった。地味男が勝手にやってるだけのことだ。
『水晶が心から愛した世界を守るために』
……こじつけだ。都合のいい大義名分にすり替えて、自分を納得させているだけだ。
「お前は、お前が愛した者が生きられなかった世界へ、声を上げたかったのであろう? もうよい。お前の声は、我らが聞いた」
「聞いた? 私の声の、なにを聞いたとおっしゃるのです?」
門川君はなにも答えない。
地味男の言葉を無視するように淡々と術を発動し続けているけれど、実際のところ、地味男の言う通りなんだろう。
このまま永遠に『道』の影響を押さえ続けてはいられない。彼の術が力尽きたそのときが、ジ・エンドだ。
「地味男! もうやめ……ゲホゲホッ!」
地味男に向かって叫んだ声は、途中で咳になって途切れてしまった。
ちょっと大きな声を出そうとするだけで、ノドが細い爪に引っかかれたようにジリジリする。
異界の空気を吸ってるダメージが、どんどん沈積され続けているんだ。
ノドに手を当てながら涙目で咳き込んでいるあたしに変わって、絹糸が言葉を続けてくれた。
「蛟よ、もうよせ。我とてお前の気持ちは理解できる故、『復讐するな』とまでは言わぬが」
絹糸の言葉を、地味男はヒザを正したまま黙って聞いている。
でもその目は、相変わらず自分の望みに賭ける者特有の、揺るがぬ色を宿していた。
「じゃが復讐とは、落としどころが肝要なのじゃ。もう充分であろう。これ以上は誰も喜ばぬ」
水晶さんの死の直接の原因となった、蛟の前長老と長兄は葬った。
妹を救うよりも秘密を守ることを優先した水園さんを、自分の企みに利用し、その精神を極限まで追いつめた。
なにも知らずに姉の命を選んだクレーターさんに事実を知らしめ、絶望の淵に追いやった。
絹糸の言う通り、もう十分だ。これ以上復讐の刃を振りかざす必要はどこにもない。
「お前が愛した女はもう、死んでいる。死者は、生者が何をしたところで泣きもせねば笑いもせん。お前は、ただ理屈が欲しいだけじゃ」
神の一族の世界を守るために、現世を生贄にする。
そんなこと、水晶さんは夢にも考えていなかった。地味男が勝手にやってるだけのことだ。
『水晶が心から愛した世界を守るために』
……こじつけだ。都合のいい大義名分にすり替えて、自分を納得させているだけだ。
「お前は、お前が愛した者が生きられなかった世界へ、声を上げたかったのであろう? もうよい。お前の声は、我らが聞いた」
「聞いた? 私の声の、なにを聞いたとおっしゃるのです?」