神様修行はじめます! 其の五
「地味男、頑張って!」
あたしは地味男の背中に向かって、精いっぱい応援した。
まさか地味男に声援を送ることになるとは夢にも思ってなかったよ。人生ってホントに何が起こるか分かんないや。
「まったく、たいしたものだな」
地味男が戦う様子をじっと眺めていた門川君が、感嘆の吐息を漏らした。
「彼は戦闘の経験は一度もないはずなのに、堂々と渡り合っている。使役しているヘビの霊質も非常に高度だ」
「そういえば、ヘビって霊質が高いんだよね?」
「彼自身も、術者としてかなりの逸材なのだろう。十四番目に生まれたというだけの理由で、これまで日の目を見ることができなかったとは」
地味男は息継ぐ間もなく、その強力な武器であるヘビを縦横無尽に放ち続けている。
次々と引き千切られた腕が雨のようにボタボタと床に落ち、巨大な『底なし穴』はグラグラと揺れ始めていた。
部品を引っこ抜かれたプラモデルみたいに、元の形を維持できなくなってきてるんだ。
よし、頑張れ地味男! 勝利は目の前だよ!
―― グイッ……
ついに『底なし穴』が、大きく後ろに反り返った。
やった、倒れる!
と思って目を輝かせて見ているのに、コイツがなかなか倒れないんだ。
手首の部分をグーッと後ろに反ったままジッとしているのを見てると、からかわれてるみたいでイライラする。
ちょっと、なに溜めてんのよ! もったいぶらなくていいから早く引っくり返ろ!
……ん? 溜める?
まるで手首のスナップを利かせるような体勢を保っている姿を見て、あたしは嫌な予感がした。
ねえ、あれってさ、あれじゃない?
ほら、手に持ったボールを遠くに放り投げようとするときのフォームにそっくり……
―― ブンッ!
あたしの心の声が聞こえたかのように、『底なし穴』がいきなり動いた。
目にも止まらぬ動作で手首が前のめりになり、手の中から水園さんが放り出される。
うわあ! コイツ本当に水園さんを放り投げやがった!
「水園さん――!」
悲鳴を上げるあたしの目の前を、壊れた人形のように脱力した水園さんの体が吹っ飛んでいく。
あの勢いで壁に激突したらタダじゃ済まない!
―― ビュッ……!
薄茶色の塊が目の前を横切った。
水園さんの体が壁にぶつかる寸前、その塊が壁と水園さんの間に滑り込み、クッション材になる。
ぼんっと跳ね返った水園さんは、そのまま床に落下した。
でもちゃんと落下地点にも薄茶色の塊が待ち構えていて、彼女を柔らかく受け止めてくれた。
おお! あれは地味男のヘビ! 地味男が水園さんを守ってくれたんだ!
「ありがとう地味男!」
振り返ったあたしは、息をのんだ。
水園さんを守るために異形から目を離した地味男の背後に、巨大な手が迫っている!
「地味男、後ろ! 『底なし穴』が狙ってる!」
ハッとした地味男が背後を確認しようとしたけれど、一瞬遅かった。
『底なし穴』の手のひらが、まるで虫でも捕まえるみたいに地味男の体をガバッと掴み取ってしまう。
「ぐはっ!?」
首から下を完全に押さえられた地味男の体から、何かが潰れるような嫌な音が響いた。
目を剥いた地味男の口から真っ赤な血が噴き出す。
「じ、地味男ー!」
あたしは地味男の背中に向かって、精いっぱい応援した。
まさか地味男に声援を送ることになるとは夢にも思ってなかったよ。人生ってホントに何が起こるか分かんないや。
「まったく、たいしたものだな」
地味男が戦う様子をじっと眺めていた門川君が、感嘆の吐息を漏らした。
「彼は戦闘の経験は一度もないはずなのに、堂々と渡り合っている。使役しているヘビの霊質も非常に高度だ」
「そういえば、ヘビって霊質が高いんだよね?」
「彼自身も、術者としてかなりの逸材なのだろう。十四番目に生まれたというだけの理由で、これまで日の目を見ることができなかったとは」
地味男は息継ぐ間もなく、その強力な武器であるヘビを縦横無尽に放ち続けている。
次々と引き千切られた腕が雨のようにボタボタと床に落ち、巨大な『底なし穴』はグラグラと揺れ始めていた。
部品を引っこ抜かれたプラモデルみたいに、元の形を維持できなくなってきてるんだ。
よし、頑張れ地味男! 勝利は目の前だよ!
―― グイッ……
ついに『底なし穴』が、大きく後ろに反り返った。
やった、倒れる!
と思って目を輝かせて見ているのに、コイツがなかなか倒れないんだ。
手首の部分をグーッと後ろに反ったままジッとしているのを見てると、からかわれてるみたいでイライラする。
ちょっと、なに溜めてんのよ! もったいぶらなくていいから早く引っくり返ろ!
……ん? 溜める?
まるで手首のスナップを利かせるような体勢を保っている姿を見て、あたしは嫌な予感がした。
ねえ、あれってさ、あれじゃない?
ほら、手に持ったボールを遠くに放り投げようとするときのフォームにそっくり……
―― ブンッ!
あたしの心の声が聞こえたかのように、『底なし穴』がいきなり動いた。
目にも止まらぬ動作で手首が前のめりになり、手の中から水園さんが放り出される。
うわあ! コイツ本当に水園さんを放り投げやがった!
「水園さん――!」
悲鳴を上げるあたしの目の前を、壊れた人形のように脱力した水園さんの体が吹っ飛んでいく。
あの勢いで壁に激突したらタダじゃ済まない!
―― ビュッ……!
薄茶色の塊が目の前を横切った。
水園さんの体が壁にぶつかる寸前、その塊が壁と水園さんの間に滑り込み、クッション材になる。
ぼんっと跳ね返った水園さんは、そのまま床に落下した。
でもちゃんと落下地点にも薄茶色の塊が待ち構えていて、彼女を柔らかく受け止めてくれた。
おお! あれは地味男のヘビ! 地味男が水園さんを守ってくれたんだ!
「ありがとう地味男!」
振り返ったあたしは、息をのんだ。
水園さんを守るために異形から目を離した地味男の背後に、巨大な手が迫っている!
「地味男、後ろ! 『底なし穴』が狙ってる!」
ハッとした地味男が背後を確認しようとしたけれど、一瞬遅かった。
『底なし穴』の手のひらが、まるで虫でも捕まえるみたいに地味男の体をガバッと掴み取ってしまう。
「ぐはっ!?」
首から下を完全に押さえられた地味男の体から、何かが潰れるような嫌な音が響いた。
目を剥いた地味男の口から真っ赤な血が噴き出す。
「じ、地味男ー!」