君の中で世界は廻る〜俺様ドクターの唯一の憂い〜
流人は、研修センターと呼ばれるだだっ広い大広間の上座に、一人で座らされた。
きっと、島の有力者が全員揃っているのだろう。流人の両側には、年配の貫禄のある男性陣がずらっと並んでいた。
きゆは、流人から遠く離れた下座の方に座っている。
家に帰って着替えてきたらしく、濃紺の清楚なワンピースを着ていた。
流人はこのようなかしこまった場は苦手だった。
大病院の息子に生まれたせいか、こういう窮屈な集まりの場によく連れて行かれた。
小さな頃はよく抜け出して、父親にこっぴどく叱られたものだ。
でも、大人になった今でも、隙あらば抜け出したいと真剣に考えている。
「では、池山流人先生に一言いただきたいと思います」
……またか。
流人は立ち上がり深々と頭を下げ、営業スマイルを貼りつけた顔で頭を上げた。
「一年という短い間ですが、皆様のお役に立てるよう頑張っていきたいと思っています。
今日、この島に降り立って、一目で気に入りました。
僕にとっても、いい経験になると思います。
よろしくお願いします」
流人はまた深々とお辞儀をして、頭を上げると同時にきゆを見た。
……は? あいつは誰だ?