君の中で世界は廻る〜俺様ドクターの唯一の憂い〜
その三人組の女性達は一斉に首を横に振った。
「だって、先生は一年で帰っちゃうじゃない。
それに、大病院の御曹司なのに、きゆちゃんと結婚なんてあり得ないでしょ?
先生は東京に帰ったら、たくさんの若い女の人と出会いがあるんだから、ここではきゆちゃんは瑛太に譲ってください。
あ、そうなった時はね……」
流人はとりあえず困ったみたいなクシャとした笑顔を作り、三人に笑って見せた。
見た目はスーツを着こなした育ちのいいクールな御曹司が、実は中身は人懐っこいチャラ男気質の気さくな青年だと分かると、周りの女性はみんな心を癒される。
例にもれず、この三人組ももう流人にメロメロだった。
流人はその歓迎会の間、全く自分の席から動けなかった。
次から次へお酌にくる人達を邪険に扱うことはできないし、それに、島の人達は温厚で親切な人が多かった。
それでも、きゆの事はジッと見ていた。
顔をその方向へ向けるだけですぐに見える位置に座っていたのも不幸だが、何よりも、きゆの隣の男の動向が気になり過ぎた。
「それでは宴もたけなわですが、このあたりでお開きにしたいと思います」
その合図とともに流人はすぐに立ち上がり、真っ先にきゆのいる場所に向かった。