君の中で世界は廻る〜俺様ドクターの唯一の憂い〜



「バカだな…
そんなしょうもない事を考えて…」


きゆは涙に溢れる目で流人を睨んだ。


「しょうもなくない…よ…
だって、院長先生は… 流ちゃんを女医さんと… 結婚させたがってる…」


流人はもう一度、きゆの手を強く握りしめる。


「全然、関係ない。
俺は、きゆと結婚したい、いや、結婚する。
親が反対しようが、そんなのどうってことないよ」


きゆは力任せに、流人の手から自分の手を引き抜いた。


「関係あるよ。私にとっては大事な事なの…

私は看護学校を出てから、ずっと池山総合病院で働いてきた。
高校から親元を離れて、寮に入って頑張っている私に、流ちゃんのお父さんの院長先生とお母さんの奥様は、すごく親切にしてくれた…

クリスマスもお正月も島に帰らないで仕事をしていると、自分達の家に呼んで下さって、ケーキやおせちをいただいたことも何度もある…

私は流ちゃんのお父さんもお母さんのことも本当に大好きで…
いつかは恩返しをしたいってずっと思ってた…

だから、無理なの……
流ちゃんのご両親が反対するのなら、私は身を引く…

だって、それが、きっと、院長先生達への恩返しになるんだもの…」





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