君の中で世界は廻る〜俺様ドクターの唯一の憂い〜
きゆと流人は40分かけて本田の家へたどり着いた。病院が島の中心部の右寄りにあるとすれば、この地域は島の一番奥まった左側に位置している。
途中から主要道路も途絶え、きゆと流人は、けもの道にコンクリートを敷いただけの険しい山道を下ってきた。
「いや、この場所から月一回、病院に来るのは大変だな」
流人はそうは言ったものの、病院と反対側に位置するこの海の景色に目を奪われた。
山から下る際に真正面に広がる大海原に、流人は運転する手が止まりそうになるほどだっだ。
この地域の海は白い砂浜で遠浅の海岸が続いている。
「きゆ、今週末に、この海で海水浴したい。
また、来ようよ、な?」
きゆは困ったような顔をして小さく頷いた。
「この地域って、災害とかがとにかく多いところなの。
長い海岸線に対して、防波堤が少ないでしょ?
ほら、ここの本田さんの家なんて、ちょうど防波堤の切れ間にある。
ま、遠浅で砂浜が広いからあんまり心配ないのかもしれないけど、でも、島の人間は海の怖さを誰よりもよく分かってる。
あと、ここまで来た道だって、あれ一本しかないから、小規模の土砂崩れがあっても、この地域は寸断されて陸の孤島になるんだから」