君の中で世界は廻る〜俺様ドクターの唯一の憂い〜
「こんにちは~~~」
流人は大きな声でそう挨拶して、入口の扉を開けた。
流人達を真っ先に歓迎してくれたのは、本田の飼っている柴犬だ。大きな声で吠えながら流人に体当たりしてくる。
「うわ~、お前、元気だな」
流人はそう言いながら診察用のバックをその場に置き、犬の目線までしゃがみと犬とじゃれ合い始めた。
きゆはそんな流人を呆れて見ていた。
流人の動物好きは実家の病院では有名な話だった。流人の父親の院長先生の話によれば、小さい頃は獣医になるときかなかったそうだ。
院長先生が、我が家では犬や猫、ハムスターまでほとんどの動物を飼ったことがあるんだと、目を細めて話していたのを覚えている。
「先生、きゆちゃん、わざわざこんな所まで来てくれてありがとう」
家の奥の方で本田の声がした。
「本田さん、上がらせてもらいますね」
きゆは柴犬とまだじゃれ合っている流人を置いて、先に家の中へお邪魔した。
「いや~、マルがあんなに先生に懐くなんて思いもしなかったよ」
本田は奥の間で座椅子に腰かけたまま、きゆにそう言った。
「流人先生は、本当は獣医になりたかったみたいですよ」