君の中で世界は廻る〜俺様ドクターの唯一の憂い〜
「本田さん、あと二日くらい安静にしてたら、だいぶ良くなると思いますよ。
でも、その二日間はちょっと動けるようになっても、無理はしないこと。
シップを貼って、のんびりしててください」
流人はカルテに書き込みながら、80歳という高齢で一人暮らしのたいへんさを思い知った。
近所があるわけでもない。
300m程離れた場所に、家が一軒あるくらいだ。
「もし何かあったら、すぐに病院に電話してくださいね。
僕は、病院に寝泊まりしてますから、夜中でも全然大丈夫ですので」
本田はマルを抱きしめ、何度も頭を下げた。
「とにかく、安静にしてて下さい。
それと、マルを抱いたまま立ち上がるのは絶対だめですよ」
流人がもう一度マルを撫でると、マルは流人の顔をペロッと舐めた。
「マル、また来るからな。
ちゃんと、おじいちゃんの面倒を見るんだぞ」
流人ときゆは名残惜しかったが、本田の家を後にした。
道路脇に停めている車に乗る前に、流人は目の前に広がる海へ向かって歩き出した。
きゆは車に荷物を載せ流人の後を追いかけると、流人は砂浜に転がっている大木に腰かけていた。
「きっと、本田さんみたいな孤独なおじいちゃんが、この島にはたくさんいるんだろうな」