御曹司様のことなんて絶対好きにならない！

「何言われたの？」

「いや、そんなたいしたことじゃないですよ？私も言い返したし。知恵ちゃんがガツンと言ってくれて、向こうは逃げちゃったくらいで」

ハハッと笑って軽く言ったのに、係長の表情は変わらない。



もーどうしたのよ。私はどうしたらいいのよ。



困惑満載の顔で見つめ返すと、やっと係長の表情が変わった。

「ごめん、八つ当たりだ。また俺は香奈美さんを守れなかったんだね」

一転、情けない顔をされるとホントに分からない。彼は何を考えているんだろう。

「今日、香奈美さんがいなくなった後に兄貴に怒られたんだ。惚れた女性があんな噂立てられてるのに気付きもしないで、何が本気だって。
俺が自分の気持ちに舞い上がって全然周りが見えてなかったせいで、香奈美さんを傷つけてイヤな思いさせたんだって思ったら、なんかもう
自分が許せなくて、さ」

くちゃりと手で前髪を握って悔しそうに言う。