御曹司様のことなんて絶対好きにならない!
「また自分に腹立ててるの?」

リビングに向かう背中に声をかけると、一瞬止まった後にびっくりした顔で振り向いた。

「あ、やっぱりそうなの?ただの当てずっぽうだったんだけど」

「‥‥ホント、香奈美には敵わないな。俺、他の人にそんな気持ち当てられないよ?」

参った、と苦笑した将生がソファに座って私に手を伸ばした。

家でくつろぐ時の将生はベタベタに甘くてスキンシップも多い。ソファに座る時もぴったりと寄り添って座るのが好きなのだ。

今夜もそうしたいのだろう、とその手を取ったらぐいっと引っ張られて将生の膝の上に座る体勢になる。

「ちょっと、将生!これ恥ずかしいよ」

抗議にはスルーしてぎゅっと抱きしめると、私の胸の辺りに将生が顔を埋めて呟いた。

「言い出す勇気がなかった自分に腹立ってんの。で、情けなくて落ち込んでる」

その声が弱々しくて、恥ずかしさも忘れて将生の髪を撫でる。

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