御曹司様のことなんて絶対好きにならない!
ドキドキする鼓動を隠すように俯いたまま言うけれど、なんだか言い訳してるみたい。

「ふーん。ま、楽しいならいいかな。
俺もアシスタントを君にしたいって課長に頼んだかいがあったよ」

「‥‥へぇ!?」

理解するまでに数秒かかってしまった。

私をアシスタントにしたのは課長の判断じゃなくて坊っちゃまの希望なの?

顔を上げて坊っちゃまを見つめて固まってしまう。予想外すぎる。

驚いた私を満足そうに見て、ニヤリと黒い、あの笑顔を見せた。

「やっぱりね。課長の判断だと思ってたんだ?
香奈美さんはなんか勘違いしてるみたいだから、そろそろ本気見せないとなって思ったのは間違いじゃなかったね」

「か、勘違い、です、か?」

黒い笑顔の迫力が半端なくて、一歩後ずさったうえにどもってしまう。なんか私このまま捕食されちゃうんじゃない?と、本能的な反応だ。

でも多分、間違ってない、はずだ。
それくらい坊っちゃまの笑顔は黒くて色気が半端ない。
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