御曹司様のことなんて絶対好きにならない!
困っていると、坊っちゃまがゆっくり、花が咲くように笑った。

花が咲くなんて男の人におかしい形容詞だけど、本当に綺麗な笑顔で見惚れた。

「ありがとう」

照れて俯いたまま呟く姿に、胸の奥がキュンッと音を立てた。




しばらくして出て来たお蕎麦は期待以上の美味しさだった。私は鴨せいろで、坊っちゃまは天せいろ。

お裾分け、ともらったサクサクの海老天を頬張りながら気付いた。

「係長って食事の時に表情ださないですよね」

美味しくても不味くても、坊っちゃまは表情が変わらない。感想を話したりもするから、味覚を感じない訳じゃないだろうけど。

確かに女性に比べて男性は無表情で淡々と食べる人は多い。でも坊っちゃまは普段、割りと感情が豊かな方だし、表情を出す事を恥ずかしがるタイプじゃないのに。


突然の私の指摘に、坊っちゃまは困ったように眉根を寄せた。



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